『知の旅は終わらない』 立花隆 <第6回>
「山ほどの好奇心を抱えて、その好奇心に導かれるままに仕事をしてきた。」と自分の人生を振り返る立花隆氏。
この本は、そんな立花隆氏の自伝であるとともに、氏がこれまで歩んでこられた探求の道のりを綴った書となっています。
本書は12章から構成されています。
第1章 北京時代と引き揚げ体験
第2章 幼少時代から高校まで
第3章 安保闘争と渡欧前夜
第4章 はじめてのヨーロッパ
第5章 文藝春秋時代からプロの物書きへ
第6章 二つの大旅行
第7章 「田中角栄研究」と青春の終わり
第8章 ロッキード裁判批判との闘い
第9章 宇宙、サル学、脳死、生命科学
第10章 立花ゼミ、田中真紀子、言論の自由
第11章 香月泰男、エーゲ、天皇と東大
第12章 がん罹患、武満徹、死ぬこと
立花さんがそれぞれの時代に、どのような探求心をもち、どう考え行動していったのかが良く分かる内容となっています。僕は、最初に12章から読んでいきました。最終章のタイトルが一番気になったからです。この章の一番最後に立花さんは「最後に書きたい本」についてこう書かれています。
「実は、僕には未発表本リストというものがあります。(中略)残りのうちで、特に気がかりなのは、『立原道作《最後の旅 盛岡から長崎へ》』、『形而上学』の2冊です。」「これ(『形而上学』)を最後の本にするつもりです。書き終わる前に寿命が尽きてしまうかもしれません。結局、人間というのは、いろんな仕事をやりかけのままに死ぬのだろうし、僕もおそらくはそういう運命を辿るんでしょう。でも、『形而上学』のはじめの二十行くらいはすでに書いてあるんですよ(笑)。 (了)」
本書はこの文章で締めくくられています。がんとの闘病の中、最後まで探求心をもち続けてこられた立花隆のその姿勢に強く感銘を受けました。
僕は、第8章以前の立花さんの著書はほとんどこれまで読んでいませんでした。ですから、この本を読んで初めて知ることも多かったし、立花さんの知的探求心の遍歴をこの本で知ることができました。
この本の発行は、2020年1月20日となっています。立花氏の未発表本リストの中にあったであろうこの本が実際に世に出され、知の旅に導いていただいたことに感謝します。
本の最後のページに「立花隆・年譜」が掲載されています。
【読んだ本】
立花隆『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』文春新書1247、文藝春秋、2020年