『秘闘』岡田晴恵〈第20回〉

岡田晴恵『秘闘 ー私の「コロナ戦争」全記録ー』新潮社、2021年

 この2年間、僕は、新型コロナに対して、本などから正しい知識を得て、コロナを過度に恐れず、自分で考えて対処してきたつもりだったが、この著書を読んで、僕の新型コロナに対する考えが少し楽観的であったことをまず思い知らされた。

 「パンデミック対策は危機管理や災害対策に匹敵する。」

 岡田さんは、楽観視が対応の遅れにつながり、ウイルスが広がってからでは、封じ込めはできないと言っています。感染症対策は、「早く強力に行って効果を上げ、短くきりあげること」が要諦であり、それが結果として経済的な打撃も少なくできる。よく、感染症対策と経済対策は別のように受け取られていますが、岡田さんは、感染症対策も経済対策も、ベクトルの方向は一緒なのだといいます。

 感染が広まってしまった今、これまでの失敗を繰り返さないために必要な事として、岡田さんは次のように提案されています。

 「この失敗を繰り返してはいけない。そのために必要なのは、新型ウィルス発生時から、きちんと最悪の事態を想定し、リスクを取って医療と経済を守り抜ける環境を作ることだ。医療確保やPCR検査の準備態勢、保健所機能の拡充等を進めることはもちろんであるが、“リスクを取った人間が非難されない”という国民理解を醸成することも必要だろう。そして何より、きちんとしたルール作りだ。「新型インフルエンザ等対策特別措置法」は感染症の危機管理、安全保障問題としての立法であった。それを躊躇なく動かせる、ルール作りが必要だろう。ウイルスが来てから整備していたのでは追いつかない。このままでは、いずれ起こる次のパンデミック時はもたない。」

 この本は、2021年11月末に執筆された本である。本の最後には、ヨーロッパが再びパンデミックになったこと、そして南アフリカで新しい変異株“オミクロン”が発見されたという報道があったことが記されている。そして、この冬また新たな感染拡大を危惧されている。

 令和4年1月、岡田さんが危惧された事態が今まさに現実として起こっている。今早急に求められているのは、臨時の医療施設、措置病院、集約医療。医療を崩壊させない整備が求められている。

 この本は、政治家や専門家らとのやり取りを明かし、科学者の目をとおして、日本のコロナ対策の舞台裏を包み隠さず記録している。
 今起こっている状況と合わせながら読み進めることにより、これからの感染症対策への考え方を深めることができた。

■次に読みたい本

 岡田晴恵『新型コロナ 自宅療養完全マニュアル』
岡田晴恵『感染しないひなん所生活』
 立川昭二『病気の社会史』

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