『子どもと本』松岡享子 〈第22回〉

松岡享子『子どもと本』岩波書店、2015年

 この本を著した松岡さんは、1974年に財団法人東京子ども図書館を設立された方です。児童文学の翻訳、創作、研究を続けておられます。(本を読んで知ったのですが、松岡さんは戦時中、母方の祖母が暮している「紀ノ川のほとりにある粉河」に疎開されていたそうです。)

 今、和歌山県では、「県民の読書文化の醸成」に取り組んでいます。
 (参考:令和3年度読書推進フォーラム「見て、聴いて、読んで、本の世界に親しもう!~人生を豊かにする読書との出会い~」 2022/2/26)

 いろんな場面で読書の重要性について、見たり聞いたりしている中で、子どもと読書について学んでみようと思っていた時、書店でこの本のタイトルに目がとまりました。
 目次を眺めていて特に気になったのは、三章の「昔話のもっている魔法の力」のところです。口伝で伝わってきた昔話や民話は地域の文化遺産です。昔話や民話の主な対象は子どもですが、子どもにとって昔話はどんな力を持っているのかについて関心を持ちました。

 子どもにとって本が大切であることは認識していましたが、この本を読んで、本がどのように子どもに影響を与えているのか体系的に学ぶことができました。
 また、この本を読んで、地域の図書館の役割の大きさについて知ることができ、図書館で働く専門職員、なかでも児童図書館員という職の重要性を知ることができました。

■本の要点

一章 子どもと本とわたし
 「幼い日に本のたのしみを知ったのが、幸せのはじまりでした。」

 とばし読みは子どもの特技:子どもは、手前にある「わからないこと」をとびこえて、直接その奥にある核心にふれることができる。」
 家庭文庫「松の実文庫」:松岡さんは、1967年に自宅に家庭文庫を開く。(毎土曜日、1時から5時まで)3カ月で登録会員数は150名を超える。1974年財団法人東京こども図書館を設立。

二章 子どもと本との出会いを助ける 
 「暮らしのなかに本があること、おとなが読んでやること、子どもを本好きにするのに、これ以外の、そして、これ以上の手だてはありません。」

 リズムのあることば:「赤ちゃんには、韻律のある言葉をたくさんかけてあげてください。」
 韻律のあることば:わらべうた(子守唄)がそれにあたる。「おつむてんてん、いないいないばあ、といった動作をまきこんだ遊びをできるだけたくさん遊んでほしい。」
 「こうした伝承のあそびのなかには、思いもよらぬほど深い意味が隠されていることがある。」
 「現代、わらべうたを保育のなかに積極的に取り入れている保育園が増えている。」
 「図書館でもわらべうたの会をひらいているところが少なくない。」
 わらべうた(昔話)のような伝承的な「文化遺産」には、合理的・科学的には説明しきれない深い意味や大きな力があると松岡さんは述べている。そして、子どもたちには、そのような根源的な力に反応する力がある。
 読書興味の発達の四段階
  第一段階 韻律のある物語や詩を喜ぶ時期(生まれてから三、四歳くらいまで)
  第二段階 生活に根ざした現実的な物語を楽しむ時期
  第三段階 空想的な物語に向かう時期
  第四段階 神話、伝説、英雄物語などに興味を示す時期
 ドロシー・バトラー「親やまわりの大人の助けを得て本にしたしむことは、子どもが、幸せで前向きな人間になる可能性を大きくします。」
 「読み聞かせによる「耳からの読書」は、「目からの読書」の力を育てる意味でも、非常に大切な事。」

三章 昔話のもっている魔法の力
 「昔話は、今でも、子どもが心の奥深くで求めているものを、子どもによくわかる形で指し出しています。」
 

 昔話を研究する学問 民俗学・心理学・文学
 「昔話が、今でも子供が必要としているもの、こころの奥深くで求めているものをさしだしているのだと信じないわけにはいかない。」
 「何世紀にもわたって、無数の人々の口と耳をくぐりぬけて生きのびてきた昔話は、その長い過程のなかで、語りやすい、聞いてわかりやすく、耳に快い表現様式を獲得してきた。」
 「むかしむかし、あるところに…」:「これは子どもを空想の世界に引き込む強力なおまじない。」

四章 本を選ぶことの大切さとむつかしさ
 「だれかのために本を選ぶときに働くのは、基本的には親切心-多少おせっかいのまじった愛情-だと思います。」

五章 子どもの読書を育てるために
 「子どもたちに、豊かで、質のよい読書を保証するには、社会が共同して、そのための仕組みをつくり、支えていくことが必要です。」
 

 くりかえしは理解への鍵:「子どもにとっては、くりかえしこそ、ものごとをつかむ=理解する鍵」
 河合隼雄「昔話の内容と現代人の心性とが強く結びついている。」
 ブルーノ・ベッテルハイム「昔話は、子どもたちが誰でも無意識のうちに抱いている不安や葛藤に働きかけて、それを和らげ、子どもを勇気づけて、成熟を促し、自立した人生へと向かう力を与える。」
 「子どもたちは、昔話に慣れ親しむことによって、自分のなかに、しらずしらずのうちに物語の枠組み―それはとりもなおさず生きる枠組みでもあるわけですが―をこうちくしている。」
 「昔話が全体として伝えているメッセージは、希望。」「苦難に対する抵抗力がつき、それに立ち向かう勇気が育まれていく。」
 ピューラー 五歳から九歳を「昔話年齢」という。
 ベッテルハイム 昔話は、子どもが五歳くらいになったころから、本当に意味をもってくる。
 昔話は人類の大きな文化遺産!

■本の中で気になった言葉

「昔話は人類の大きな文化遺産!」、「児童図書館員」

■次に読みたい本

岡本夏木『子どもとことば』岩波書店
岡本夏樹『ことばと発達』岩波書店
マックス・リュティ『ヨーロッパの昔話』
シャーロッテ・ビューラー『昔話と子どもの空想』
河合隼雄『昔話の深層』
ブルーノ・ベッテルハイム『昔話の魔力』
ドロシー・ホワイト『五歳までの本』
外山滋比古『エディターシップ』
石井桃子『子どもの図書館』

 

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