「教員免許更新」廃止 毎日新聞記事<第15回>
毎日新聞朝刊(2021.6.24)
大久保昴「教員免許更新」廃止 文科相表明 発展的解消案受け、CUクローズアップ 免許更新教員負担重く、「世界一多忙」改善必須
教員免許に10年間の有効期限を設け、更新時に大学などでの講習を義務づける「教員免許更新制」について、萩生田文部科学相は23日、廃止する方針を表明した。この制度は、第1次安倍政権による2007年6月の法改正の結果、2009年度から導入された制度である。文科省は、来年の通常国会で必要な法改正を目指すことになる。制度ができて12年で廃止となる「教員免許更新制」とはどんな制度だったのか。
記事によると、中央教育審議会の小委員会は、「10年に1度の講習では時代の変化への対応が難しくなったことから「発展的解消」が必要と判断した。」ことが廃止の理由として挙げられています。
「発展的解消」とはどういう意味なのか。僕には「戦略的撤退」と同義語のように思えてしまいます。「発展的解消」という言葉からは、12年間で廃止することになったことを検証することなく、次の新しい制度を構築していく事になるのではないかという危惧を感じてしまいます。
中央教育審議会の小委員会は 、制度を廃止する代わりに教員の学びを促す取り組みとして、次の3つの項目についてを文科省に求めていくと記事には書いてありました。
・都道府県教委などが教員の研修の受講履歴を管理し、学びを促すことを義務づける。
・オンラインでの研修を充実させる。
・研修の受講に後ろ向きな教員の処分も含めた対処法をガイドラインで定める。
埼玉大学の高橋哲准教授(教育行政学)は、「教員が学校内外でもっと自由に学べる環境を整えることが必要ではないか」と指摘しています。僕はこの高橋さんの意見に賛同します。受講履歴を管理したり研修の受講に後ろ向きな教員に対しての処分などを取り決める事よりも自由に学べる環境の整備の方が重要ではないかと感じました。
1946年、戦後すぐに施行された教育公務員特例法は、教員を高度な専門職と位置づけ、授業に支障がない限り、勤務時間中であっても校外で自己研鑽を積むことを認めています。
「教員は普段から学び続ける必要がる。」
高橋さんは、「職務の一環として教員同士の勉強会に参加したり、大学院の授業を受けたりする権利と時間が保証されるべきだ。」と述べられています。学びは強制されるものではなく、自己研鑽の意志を尊重すべきだと強く感じました。
しかし、一方では教員の自己研鑽に対する姿勢が二極化している可能性があるとの指摘も記事の中で紹介されています。教育研究家の妹尾昌俊氏は、2019年12月~2020年1月、小中学校や高校などの教員708人を対象に実施した調査において、ほとんど本を読まない教員が38%いたことが確認できたといいます。このほか、外部のセミナーや勉強会への直近1年間での参加状況については、1割が「7回以上」と回答したのに対し、3割が「まったくない」という結果になったそうです。
時代の変化に合わせ、教員に新しい知識や技能を身につけたもらうのが目的だった「教員免許更新制」は、現職教員の負担増や産休・育休の代替教員の不足につながるなどの「負の側面」が露呈する結果となったと記事は指摘しています。
現職教員の負担といえば、「世界一多忙」といわれる労働環境もよく指摘される側面です。記事では、経済協力開発機構(OECD)が2018年に実施した国際教員指導環境調査(TALIS)のデータを紹介していました。
〇日本の教員の1週間あたりの仕事時間
・小学校:54.4時間(15カ国・地域が参加、日本が最長)
・中学校:56.0時間(48カ国・地域が参加、日本が最長)
〇知識や専門性を高める「職能開発」の時間
・小学校:0.7時間 (15カ国・地域が参加、日本が最少)
・中学校:0.6時間 (15カ国・地域が参加、日本が最少)
妹尾さんは、現職教員の負担軽減を図ることが不可欠ではあるが、それだけですべて解決するわけではない」と指摘されています。 高橋さんが指摘された 「教員が学校内外でもっと自由に学べる環境を整えること」が課題解決の糸口になるのではないかと記事を読んで感じました。